令和6年度 就労継続支援B型の報酬改定
基本報酬と加算・減算について
平均工賃の水準に応じた報酬体系の見直し
- 「平均工賃月額に応じた報酬体系」平均工賃月額が高い区分の基本報酬が下がり、低い区分の基本報酬が上がる。
- 「利用者の就労や生産活動等への参加等」の報酬体系 短時間利用減算を新設
- 多様な利用者への対応を行う事業所について、新たに人員配置6:1の報酬体系が創設
- 目標工賃達成指導員配置加算の要件の見直し
- 目標工賃達成加算の新設
就労継続支援B型サービス費(Ⅰ) 6:1【新設】
- 令和6年4月1日からの新設の報酬体系
※定員20人以下
平均工賃月額 | 単位 |
---|---|
4万5000円以上 | 837単位 |
3万5000円以上 ~4万5000円未満 | 805単位 |
3万円以上~3万5000円未満 | 758単位 |
2万5000円以上 ~3万円未満 | 738単位 |
2万円以上~2万5000円未満 | 726単位 |
1万5000円以上~2万円未満 | 703単位 |
1万円以上~1万5000円未満 | 673単位 |
1万円未満 | 590単位 |
就労継続支援B型サービス費(Ⅱ) 7.5:1
※定員20人以下
平均工賃月額 | 単位 |
---|---|
4万5000円以上 | 748単位 |
3万5000円以上~4万5000円未満 | 716単位 |
3万円以上~3万5000円未満 | 669単位 |
2万5000円以上~3万円未満 | 649単位 |
2万円以上~2万5000円未満 | 637単位 |
1万5000円以上~2万円未満 | 614単位 |
1万円以上~1万5000円未満 | 584単位 |
1万円未満 | 537単位 |
就労継続支援B型サービス費(Ⅲ) 1
※定員20人以下
平均工賃月額 | 単位 |
---|---|
4万5000円以上 | 682単位 |
3万5000円以上~4万5000円未満 | 653単位 |
3万円以上~3万5000円未満 | 611単位 |
2万5000円以上~3万円未満 | 594単位 |
2万円以上~2万5000円未満 | 572単位 |
1万5000円以上~2万円未満 | 557単位 |
1万円以上~1万5000円未満 | 532単位 |
1万円未満 | 490単位 |
高工賃の事業所は、単価が引き上げられ、平均工賃月額が1万5000円未満の事業所は、単価が引き下げられている。
平均工賃月額の算定方法の見直し
事業所の中には、障がい特性等により利用日数が少ない方を多く受け入れる場合があることを踏まえ、通知を改正し、基本報酬を算定する際の平均工賃月額の算定方法について、平均利用者数を用いた新しい算定式が導入されます。
前年度の平均工賃月額の算定方法
① 前年度における工賃支払い総額を算出
② 前年度における開所日数1日あたりの平均利用者数を算出
(前年度の延べ利用者数 ÷ 前年度の年間開所日数)
③ ① ÷ ② ÷ 12月 = 1人当たりの平均工賃月額
加算と減算
短時間利用減算【新設】 基本報酬 30%減算
- 「利用者の就労や生産活動等への参加等」の報酬体系を取っている事業所が対象です。
- 算定利用時間が4時間未満の利用者が全体の5割以上である場合には、基本報酬を減算されます。
- 一般就労等に向けた利用時間延長のための支援が位置付けられ、実際に支援を実施した場合、または短時間利用となるやむを得ない理由がある場合は利用者数の割合の算定から除外することができます。
目標工賃達成指導員配置加算 45単位(定員20人以下)
新たに人員配置「6:1」の報酬体系が創設されたことにより、目標工賃達成指導員配置加算の要件が見直されました。
目標工賃達成指導員配置加算の要件
① 目標工賃達成指導員を常勤換算で 1.0人以上配置
② 職業指導員+生活支援員の総数が常勤換算で 6:1以上
③ 職業指導員+生活支援員+目標工賃達成指導員の総数が常勤換算で 5:1以上
目標工賃達成加算【新設】 10単位/日
- 目標工賃達成指導員配置加算の対象となる B 型事業所が、各都道府県において作成される工賃向上計画に基づき、自らも工賃向上計画を作成するとともに、当該計画に掲げた工賃目標を達成した場合に加算されます。
・上記の目標工賃達成指導員配置加算とこの加算を加えると55単位。現行は89単位であったので大きな見直しとなっています。
就労系障がい福祉サービスを一時的に利用する際の評価
- 一般就労中の障がい者が就労継続支援B型事業所を一時的に利用する際は、基本報酬を算定する際の平均工賃月額の計算から、当該障がい者の労働時間と工賃を除くこととなります。
施設外就労の実績報告書の提出義務の廃止等の見直し
- 自治体の事務負担軽減のため、事業所から毎月市区町村に提出していた、施設外就労に関する実績報告の提出が不要となります。
- 施設外就労の実績記録書類の作成保管義務は継続。
他サービス共通の改定事項(就労継続支援 B 型関連項目抜粋)
福祉・介護職員処遇改善加算
- 令和5年度までは処遇改善加算、特定処遇改善加算、ベースアップ等支援加算に分かれていましたが、現行の各加算・各区分の要件及び加算率を組み合わせた4段階の「福祉・介護職員等処遇改善加算」に令和6年6月から1本化するとともに加算率が引き上げられます。
- 新加算(Ⅳ)が基礎となり、その加算額の1/2以上を月額賃金の改善(ベースアップ)に充てることが要件となっています。
集中的支援加算【新設】
高度な専門性により地域を支援する人材(広域的支援人材)が事業所等を集中的に訪問等し、適切なアセスメントと有効な支援方法の整理を共に行い環境調整を進め、支援を行った場合の評価が新設されました。
※期間は3ヶ月を限度
- 広域的支援人材が訪問等した場合の評価 1000単位/回(月に4回を限度)
- 状態が悪化した者を受け入れた事業所への評価 500単位/日
広域的支援人材
- 強度行動障害に関する支援困難事例に対して助言を行い地域を支援する人材
- 発達障害者地域支援体制整備事業(発達障害者地域支援マネージャー)等での配置を想定
視覚・聴覚言語障害者支援体制加算の拡充
- 視覚、聴覚、言語機能に重度の障がいがある利用者を多く受け入れている事業所において、様々なコミュニケーション手段を持つ利用者との交流にも配慮しつつ、より手厚い支援体制をとっている事業所をさらに評価することとなりました。
本人の意向を踏まえたサービス提供(同性介助)
- 本人の意思に反する異性介助がなされないよう、サービス管理責任者等がサービスの提供に関する本人の意向を把握するとともに、本人の意向を踏まえたサービス提供体制の確保に努めることとなりました。
障がい者虐待防止の推進
虐待防止措置未実施減算【新設】
令和4年度から義務化された障がい者虐待防止措置を未実施の障がい福祉サービス事業所等に対して、基本報酬を1%減算することになりました。
次の1~3が一つでもできていなければ減算となります。
- 虐待防止委員会を定期的に開催するとともにその結果について職員に周知徹底を図る
- 職員に対し、虐待の防止のための研修を定期的に実施する
- 上記措置を適切に実施するための担当者を置く
その他、虐待防止委員会(身体拘束適正化委員会を含む)において、外部の第三者や専門家の活用に努めることや、都道府県の実施する虐待防止研修を管理者及び虐待防止責任者が受講することが望ましいとされています。
身体拘束等の適正化の推進
身体拘束等の適正化の徹底を図る観点から、減算額が引き上げられました。
現行では、基準を満たしていない場合に、1日につき5単位を基本報酬から減算することとなっていましたが、改定後は基準を満たしていない場合に基本報酬の1%を減算することとなりました。
個別支援計画の共有
指定基準において、各サービスの個別支援計画について、指定特定(障害児)相談支援事業所にも交付することが義務付けられました。
障がい者の意思決定を推進するための方策
- 相談支援専門員やサービス管理責任者が行う「サービス担当者会議」「個別支援会議」について、利用者本人が参加するものとし、当該利用者の生活に対する意向等を改めて確認することとされました。
高次脳機能障害者支援体制加算【新設】 41単位/日
次の1から3の要件を全て満たした場合、加算を算定することができます。
- 高次脳機能障害を有する利用者が全体の30%以上
- 高次脳機能障害支援者養成研修を修了した従業者を、50:1以上で配置
- その旨を公表している
人員基準における両立支援への配慮
現行では、「育児・介護休業法等」による短時間勤務制度を利用する場合、週30時間以上の勤務でも、常勤として取り扱うことができましたが、これに加え、「治療と仕事の両立ガイドライン」に沿って事業所が設ける短時間勤務制度を利用する場合にも、週30時間以上の勤務で「常勤」として取り扱うことが認められます。
管理者の働き方について
- 一定の条件を満たした場合、管理者は同一敷地内等に限らず、同一事業者によって設置される他の事業所等の管理者または従業者として勤務できるようになります。
- 管理者のテレワークについての取り扱いが示され、一定の条件を満たした場合テレワークが可能となります。
業務継続計画未作成減算【新設】
以下の基準を満たしていない場合は、所定単位数を減算する「業務継続計画未作成減算」が新設されました。
就労継続支援 B 型は所定単位数の1%を減算となります。
ただし、令和7年3月31日までは、「感染症の予防及び蔓延防止のための指針の整備」及び「非常災害対策計画」の策定を行っている場合は、減算されません。
遅くとも、令和7年4月1日までには、BCP計画を策定して、必要な措置を講じる必要があります。
① 感染症や非常災害の発生時において、利用者に対するサービスの提供を継続的に実施するため及び早期の業務再開を図るための計画(業務継続計画)を策定する
② 業務継続計画に従い必要な措置を講じる
情報公表未報告減算【新設】
障害者総合支援法第76条の3の規定に基づく情報公表にかかる報告がされていない場合、所定単位数を減算する規定が新設されました。
就労継続支援 B 型事業所は、所定単位数の5%を減算することとなります。
また、都道府県(指定権者)は、指定の更新申請があった場合、申請事業者が情報公表を行っているか確認することとなりました。
ワムネットへの公表ができていない事業所様は忘れずにご対応ください。
食事提供体制加算の経過措置の取扱い
令和9年3月31日まで経過措置が延長されることとなり、一部要件の見直しがなされ、次の1から3全てに適合する事業所が食事提供体制加算を算定可能となります。
- 管理栄養士(栄養士)が献立作成に関わること(外部委託可)または、栄養ケア・ステーションもしくは保健所等の管理栄養士(栄養士)が栄養面について確認した献立であること
- 利用者ごとの摂食量を記録していること
- 利用者ごとの体重や BMI を概ね6ヶ月に1回記録していること
その他令和6年4月から義務化される事項
感染症対策の強化にかかる取組み
- 感染対策委員会の設置と委員会の定期開催と委員会での検討結果を全従業員に周知徹底すること
・対策範囲は「感染症の予防及び蔓延防止」に加えて「食中毒の防止」
・開催頻度は3ヶ月に1度以上
・専任の感染症対策担当者を決めておく
・構成委員は複数の職種による混成が必要
・事業所以外の感染管理等の専門家との連携が望まれる - 指針の整備
感染症対策のための指針の内容について
・事業所内の衛生管理
・支援に係る感染症対策(手洗い等の予防策)
・発生時の把握
・感染拡大の防止
・医療機関/保健所/市町村等との連携報告
・感染症対策委員会の構成
・感染症対策のための定期的な研修と訓練実施 - 定期的な研修・訓練の実施
・定期的な研修:年に2回以上
・定期的な訓練:年に2回以上
義務化に伴い運営規定を変更し届け出を出す必要があります。
感染症・非常災害発生時の業務継続に向けた取り組みの強化
- BCP 計画(新型コロナ・非常災害)の策定と周知
- 研修及び訓練の定期的な実施
- BCP 計画の定期的な見直しと必要に応じた計画の変更
まとめ
算定利用時間が4時間未満の利用者が全体の5割以上である場合には、基本報酬を減算。
やむをえない事情がある場合は算定から除外できるとしているが、4時間以上働けない方は利用を拒まれるケースあるのではないかと懸念してしまいます。
利用者にとっては不利益にしかならないように感じました。
不正受給している事業者もゼロではないのでそういった背景もあってことだろうとは思いますが。
同性介助の努力義務や感染症・非常災害発生時の取り組みの義務化は昨今の情勢を踏まえると妥当ではないかと思います。
利用者の就労継続の支援に加え、利益もある程度追及しなければならない厳しい改定となりました。